2010/11/12
君達は騙されているのだよ
フランスより HAT です。こちらの授業で面白いのは、ブランド・マーケティングです。元々、ブランドに全く興味のない私でしたが、話を聞いているとブランド・マーケティングには様々な趣向が凝らされています。
エセックでも、ルイ・ヴィトンやエルメスに就職を希望する学生は多くいます。しかしながら、これらの会社の給料はとても安く、何故そんなところに勤めたいか、私はさっぱり分かりませんでした。
授業を担当する教授によると、「ブランド会社が儲かるのは、安い材料と安い労働力を使って、意味もなく高く売っているからだ。また、ブランド品というのは半年毎に10%程、価格が上がる。価格を上げる度にモデル・チェンジを行って、同じ人にたくさんの商品を売ろうとしているのだよ。価格がそのままだと、誰でも買えるようになって、ラグジュアリー・ブランドではなく、カジュアル・ブランドになってしまうからね。君達はそんな商品を買わされているのだよ。」
一人の学生が質問します。「ブランド品は質が良いから、人気があるのではないですか?」
教授は答えます。「質が良いというのはどうやって確認する?最近は偽ブランド品の方が質が良いのだよ。偽物の場合、高額なマーケティング費用がかからないからね。君達は騙されているのだよ。」
ブランド・マーケティングの授業なのに、ブランド否定とも取れる内容なのが興味深いです。もう一つ面白いのは、偽ブランドに対応するコンサルタントがフランスにはいるのです。以前、中国のあるビルで、1階に本物のブランドショップ、7階にそのブランドの偽ショップがあったそうです。通常であれば、本物が偽物にクレームをつけそうなものなのに、この時は何も言わなかったらしい(背後にコンサルタントの助言があったとのこと)。
下田合宿のマーケティングの授業で、シャワー効果(デパート等で高層階にスーツ等を置き、下層階に買いやすい食品等を置いて消費を加速させる効果)をY先生から教わった。偽ブランド店が7階に入っていたこの中国のビルでは、逆シャワー効果なるものがあったようだ。7階の偽物の値段を確認して、1階の本物の値段がそれ程高くないと判断した客が結構本物を買っていたとのこと。今は偽物店はないとのことだが、偽物でさえうまく使うところにブランドメーカーのしたたかさを感じるなぁ。
自分が唯一持っているブランド品と言えば、ニューヨーク赴任が終わる時、当時の上司がプレゼントしてくれたモンブランのペンくらい。それが書きやすいかというとそうでもなく(失礼!)、普段はノック式の安いペンを使っている。確かにブランド品の質が良いかどうかは分からんよなぁ。
また、ルイヴィトンの花のマークは手裏剣の様に見えるが、これは実際に手裏剣(家紋)がモデルになっているらしい。ルイヴィトンの創設者が来日した際、日本の文化に感化され、手裏剣に似たマークが使われたとのこと。
「だから、ルイヴィトンは日本で人気なんじゃないか?」教授はそう言いながら、私の方を見てニヤリと笑うのでした。この教授も親日家らしく、こちらが質問すると「Oh, by the way...」と言いながら、聞いてもいない日本の事例を出してきます。本当にフランスには親日家が多いなぁ。
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