2010/10/25

フランス雑感

こんにちは。村井です。
昨日、中国人留学生とフランス人、私、河田さんとで火鍋(四川風の辛い鍋)を囲んできました。フランスの食べ物は基本的に美味しいのですが、久しぶりにアジアの味にふれてとほっとしました。自分はやはり日本人だなあというアイデンティティを認識した瞬間でした。
これまでフランスの景色や旅行の話ばかりだったので、今日はフランスに来て感じたことについて綴ってみたいと思います。

さて、私の取っている授業では、なぜかフランス人のSup de Cop(日本でいう修士課程)の学生さんと一緒にグループワークをやることが多いです。まず、フランス人とグループワークをやっていて思うことから書いてみましょう。フランス人はとても論理的です。伝統や文化を大切にしているお国柄ということもあり、課題のテーマ(企業研究など)に関しても、過去に遡って社会や企業の文化的、歴史的背景から答えを見出すことを得意としているようです。我々日本人は、効率性や生産性に目が向いているので企業を見る視点がずいぶんと違うなあと感じました。簡単に言えば、日本はスクラップ&ビルドだけど、ヨーロッパは積み重ね型(accumulated)だということです。現在の形になるために、過去こういう過程を通ってきて現在に至るみたいな。それと、フランス人はグループワークの際、自分の出した意見に対して必ず理由を答えてくれるので、僕にとってはとても良い環境です。おかしいと思ったり、こういう考え方もあるよ、と思えば意見を出すし、それで論理が通っていたら彼らの意見に同意する。だからグループワークも早く終わります。
まあ、HATさんはいつもフランスを批判的に書くのですが、物の見方によっては逆のことも言えます。確かにフランスはストライキが異常なほど多いです。これは否定しません。相当経済的にも損をしていると思います。一方、日本はというと、日本人は確かに働いています。バカンスもありません。で、結果はどうかというと、これだけ働いてフランスと同じかそれ以下の経済成長しかできていない現状です。これをどう見るべきでしょうか。フランス人は以外と効率的に労働をしていると考えることができませんか。
また、これについては、日本人は自分で自分の首を絞めているという考え方もできます。フランスの店は日曜が基本的にお休みです。特に、ここReimsでは日曜は食料品も買えません。でもみんなが休むことに納得(宗教的見地)しているからこれで良いのです。逆に日本はサービス過剰と考えることもできます。サービスを提供するために、昼夜を問わず自分たちもその労働に加担しているのですから。どういう働き方が良いのか考える必要もあるでしょう。あと日本人は良質の製品を安価に作ったり、大量に作ったりするのが得意ですから、物に価値を付けにくいですね。いっぱいある物に高いお金を払う人はあまりいません。この点について言えば、フランスはデザインやブランドといった無形の価値を付けるのが得意だと思います。但し、工業製品(特に日用品の小物)は日本に比べ高く、品質は10年以上遅れをとっている感があります。それと、基本は農業国なので農産物は安いです。
 次に感じるのは、社会全体のルールに関することです。日本も自己責任という考え方をもっと導入すべきでしょう。自分の身は自分で守る。この考え方は重要です。確かに何か起きたら警察に助けてもらうしかありませんが、所詮警察も何か事件にならないと動けませんから。最近思うのは、日本もそれほど安全ではないということです。海外は危ないという概念が定着していますが、日本だって人の目が行き届かないところは決して安全とは言えません。これは基本的に世界のどこの都市でも同じだと思います。
 自己責任という点で感じるのが、社会インフラに対するコストのかけかたです。鉄道にしても郊外に行くとフェンスのないところをTGVが高速で通過したりします。日本の新幹線だと人が入り込まないように鉄道会社がコストをかけて全区間で対策を講じますが、こういうコストが建設費を高くする理由の一つになるような気がします。人口や税収が減っていく中で、今後どのように社会インフラを維持していくか根本から考えなくてはならないでしょう。また、今やスローガンのように使われている「コスト削減」という言葉ですが、現状のルール(法律や制度)を変えずに金を削るだけならば、製品や建設に関する仕様は変えられないので、物を安く買ってカバーするか、単純に業者に同じ仕事を安くやらせるしか術がないのではないでしょうか。仕事をしていて思うのは、皆さんやり方を変えることには非常に慎重ですし、変えた後何が起こるか分からないのでむしろ変えたくないというのが本音だと思います。文化や伝統、日本人の気質などをあまり考えずに効率性や経済性という観点だけでやろうとしても、日本人の本質と政策が一致しないのでうまく機能しないのではないかと思います。人間の本質的研究と経済、技術の3つが揃ってはじめてうまく機能するのではないでしょうか。西洋の人は哲学や芸術に関する話を良くしますし、詳しいです。日本では就職の際に、こういった学部で学んだ人が一般的に不利だと言われているのはとても残念な状況だと思いますね。

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