2010/10/17

それでも日本に MBA が必要な理由


  フランスより HAT です。先日投稿した「日本に MBA が普及しない理由」に対して、ある方から連絡を頂きました。その内容は、「MBA が日本に普及しないと思っているあなたが、なぜ MBA を取ろうとしているのか?」というものでした。

  日本で MBA が普及しにくいとは書きましたが、MBA が必要ないとは全く考えていません。それどころか、日本ではこれからますます MBA が必要とされるだろうと考えています(正確には、海外進出を図ろうとする企業に必要とされると想定)。

  その最大の理由は、日本人が今後外国人を部下に持つ機会が増えると考えるからです。日本の国内市場が縮小することは、誰にも変えられません。そうすると、日本企業が海外に進出せざるを得なくなります。海外に出るということは、外国人を顧客にして、外国人を従業員として雇用することを意味します。

  海外で優秀な従業員を雇おうと思う場合、どうするのが一番簡単でしょうか?最も手軽なのは、MBA ホルダーを雇うことです。欧米はもちろんですが、最近では新興国でも MBA ホルダーが労働市場にあふれています。良いか悪いかは別として、日本における学部卒と同じ感覚で MBA が存在しているのです。

  海外で MBA を雇ったとして、管理者としてやってきた日本人が MBA を持っていないとどうなるでしょう?部下によっては、その上司を「MBA を持ってないくせに」と陰口をたたく奴がいるのです。信じられないかもしれませんが、私がアメリカで働いている時、実際にこの光景に出くわしたことがありました。

  リーマン・ブラザーズを買収した野村証券も、上記のようなジレンマに陥っています。殆どがMBA ホルダーの旧リーマン社員を、非MBAホルダーの野村社員が中々管理できないのです。なぜならば、MBA の有無を理由に旧リーマン社員は自分達の方が、野村社員よりも優秀であると思っているから。

  但し、野村は日本人MBAホルダーを積極的に採用し、企業派遣で MBA 留学も行っているため、時間の経過と共に状況は改善するものと思われます。野村は元々、学歴に関係なく能力で昇進が決まることで知られていました。その野村が MBA という学歴で苦しめられることになるとは。中々、世の中うまくいかないものです。

  また、同じ質問者の方から、「日本人の平均能力が高いのは分かるが、今後の世界では平均能力だけで戦うのは難しいのでは?」というコメントも頂きました。その通りだと思います。前回、「現場に判断力がある」と書いたのは、「実務が重視される」ことの裏返しのつもりでもありました。「高い平均能力」と「卓越した個の力」、この相反するものを同時に高めるのは、難しそうだな・・・


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