2011/01/16

それでも金融不安は続く


  フランスより HAT です。アメリカからの留学生に時々遭遇しますが、数的には大変少ないです。リーマンショック後のドル安によって、アメリカ人の購買力が低下したこともあるだろうが、やはりフランスとの仲が余り良くないことも含まれるのか。

  サンダーバードから来たアメリカ人留学生は元々西海岸出身だったそうだが、ニューヨーク等の東海岸で仕事を探すとのこと。その理由として、やはりカルフォルニア経済の不振が挙げられるらしい。マンハッタン等は例外として、まだアメリカの不動産市況は思わしくないようである。

  今回の問題を大きくしているのは、アメリカの住宅ローンがノンリコースローンであることだ。「ノンリコースローン」とは借入人がお金を返せなくなった時、金融機関は住宅以外の資産を差し押さえられないローンのことである。

  「何のこっちゃ?」と思われた人がいるかもしれないが、要は借金返せなくなったら家を出て、銀行に差し出せば、それ以外の責任は問われないローンのことである。ローン残高が仮に2000万円あって、住宅価値が1000万円しかなくても、銀行は借入人に「足りない1000万円を返せ」ということはできないのである。言い換えると、アメリカでは資産価値が下がってしまうとローンを返すインセンティブがなくなり、家を明け渡す「リターン・キー」現象が巻き起こっているのである。

  上記の例で出たローン残高2000万円、資産価値1000万円の住宅ローンは典型的な不良債権である。極論するとこの1000万円の損失を穴埋めするために、米政府は金融機関に天文学的な公的資金を注入したとも言える。

  日本でも90年に大きなバブルがはじけたが、住宅ローンがリコースローンの形であった。アメリカとは逆でローン残高2000万円、資産価値1000万円の住宅ローンの場合、銀行が借入人に「残りの1000万円を返せ」と言えるローンなのである。この場合だと、資産価値が下がってもローンを返すインセンティブがあるため日本人は自分から家を明け渡すことはなく、ローンを返し続けたのである。

  日本は不良債権処理に15年の年月を費やしたが、基本的に日本の銀行が抱えていた不良債権は法人向けであった。一方のアメリカは、法人と個人両方で大きな不良債権を抱えていることになる。

  金融機関への公的資金注入により問題は終わったとする識者もあるが、民間から公的部分に不良債権が移っただけという考え方もできる。KBSの中にも将来金融機関のトップになる方がいるであろうが、米銀の二の舞は是非とも避けて頂きたいものである(苦笑)。

  

0 件のコメント:

コメントを投稿