2011/01/20

インパール作戦


  フランスより HAT です。日本は世界で最も流通が発達した社会ですが、フランスは郵便や宅配便のシステムがそれほど親切ではありません。
  
  仕事の関係で書類を日本から送ってもらった際、受取人のサインが必要とのことで「不在届け」が郵便受けに入っていました。電話して連絡したところ、「土日は配達していない」とのこと。学校があるので平日夕方以降に持ってきてくれと頼んだところ、「そんなことはできない」との返事。
  
  この場合、選択肢としては二つあった。①指定した日(平日)に一日中部屋にいて、ひたすら荷物の到着を待つ(指定した日なのに来ないこともある)。②片道5kmくらいの郵送センターみたいなところまで、歩いて取りに行く(不便なところで電車やバスは走っていない)。
  
  荷物を受け取るだけでこれだけ大変なのだから、送る場合は更に複雑だ。まず最初に直面するのは、段ボール箱をどこで調達するかだ。スーパーに行けばもらえそうなものだが、くれないところも結構あった。3件目のスーパーでようやくもらうことができた。
  
  次は、段ボール箱を郵便局までどうやってもっていくかだ。日本であれば電話一本で取りに来てくれるが、こちらではそんなサービスはない。家から郵便局までは700、800mあり、しかも上り坂になっている。普通の段ボールでも荷物を入れると10kg近くなり、これを持って坂を歩くのは思いのほか骨の折れる作業だった。
  
  旧日本軍はインパール作戦で、30kg以上の荷物をもって山を登っていたというが、フランスの坂を歩きながら、彼らの苦しみは想像を絶するものだったろうなと感じたものだ。
  
  さて、ようやく郵便局に着いたと思ったら「その段ボールは大きすぎて運べない」と言われ、もう一度寮に帰って二つの箱に分けるというおまけつきだった(マニュアル上は配送可能な大きさなのだが、その女性の担当者が持ち上げられないと判断したみたいだ)。再びスーパーに行って、「小さめの段ボール箱をくれ」というところからやり直しである。
  
  そんなこんなで、日本に荷物を送るだけで丸二日かかった。不思議だったのは、一連の作業中、何を言われても腹を立てることなく、「そうなのか」と感情的になることなく、手続きをした点である。ドストエフスキーは「人間はどんな環境にも慣れる」と言ったが、フランスでの生活には結構当てはまるようで、慣れれば慣れるものである。
  
  結局、引越し作業や一連の手続きが予想以上に煩雑なため、アジアカップ観戦はおあずけとなった。その代りにインターネットで試合を観戦し、こちらでの最後の月を楽しんでいる日々である。
  
  フランスは不便なように見えるかもしれないが、日本とは逆で「供給不足社会」なので、デフレに陥る可能性は低いようにみえる。あらゆるサービスがある日本の生活は便利だが、供給過剰が行きすぎてデフレに苦しんでいる姿にフランス人はどう感じるのだろう。
  
  そんなことを考えた晴れた日の午後でした。
  

0 件のコメント:

コメントを投稿