2011/01/24

エスキモーに氷を売る男


  フランスより HAT です。キャリアを積む上で最初の職場が大切だとする学者が多いが、あながちそれは間違っていない気がする。

  私の場合、富裕層を担当する営業部隊のアシスタントがキャリアのスタートだった。誰でも最初に経験する雑用である伝票作成、電話取り次ぎ、顧客対応が主な業務だったが、同僚が色々な企業出身者だったので面白かった。

  上司だった人が日商岩井(現双日)、その他が日銀、ブリジストン、長銀(現新生銀行)、大和銀行(現りそな)と皆違うところで経験を積んでいた。日本企業出身者の良いところは、新人にちゃんと注意してくれるところだ。

  彼ら自身が厳しく教育されてきたこともあって、言葉遣いや職務に問題があると一つひとつ教えてくれた。自分もそうかもしれないが、外資系企業に最初からいると新人に物事を教えるのがうまくならないことが往々にしてある。

  さて、当時の上司だった人は社内でも有数の敏腕営業マンで、「エスキモーに氷を売る男」と呼ばれていた。半年くらい経って私も顧客訪問を始めたのだが、契約が取れずすごすごと職場に戻ると、「ビジネスはノーと言われた時から始まる。一度断られてもあきらめちゃいかんぞ」と後日一緒に同じ顧客を訪れて仕事を助けてくれるのだった。

  彼から教えられたのは、顧客が「そうだね」とか「なるほど」と頷くような話しかけ方をしろということだった。今だったら、「ドル安いですよね」とか「金利低いですよね」等の話をもちかけ、「そうだね」と頷かせながら本題に入るといったやり方だ。

  本当に効くのだろうかと最初は疑ったものだが、続けていると結構効果的なことが分かり、仕事以外の場面でも使える話術だなと感心したものだ。さすが、エスキモーに氷を売る男である。

  今から考えても、一番最初の部署はとても優秀な人達がそろっていたような気がする。「健康な人間は健康を知らない」というのはユダヤの格言だが、幸せな環境にいるとそれが普通だと人間は思ってしまうようだ。KBS もそうであったように、できるだけ良い人達に囲まれて働きたいものである。

  

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