2011/01/28
市場の神
フランスより HAT です。日本国債格下げのニュースが報じられているが、例によって動きは一時的なもので為替が若干上下したものの、長期金利は変わらずじまい。
財政破綻論者は「最悪のシナリオ」とまくしたてるが、彼らの殆どは資産を円預金にしているはずで、「俺は日本が破綻してインフレが来ると思うから、預金を全て株式と不動産に移しかえたぜ」と言う人はいない。ここに財政破綻論者の矛盾がある。
「金利が上がるぞ、日本は破綻するぞ」と15年前から言い続けてきた財政破綻論者もいるが、逆に金利は下がり、デフレが続いている。オオカミ少年は最後にオオカミが来たが、日本破綻がいつ来るか分からず、来ない可能性もあるため、財政破綻論者はオオカミ少年よりたちが悪いかもしれない。
オオカミ少年は「来ない」と思っていたオオカミが来たが、財政破綻論者は「来る」と思っている日本破綻が中々来ない。世の中うまくいかないものだ。
さて、いつも思うのだが格付け機関というは不思議なものである。銀行、証券、保険会社等の金融機関は株式、債券等を担保にして様々な融資を行っている。その際、担保となりうるのは格付けがBBB(トリプルB)以上の金融資産で、BB以下になると投資不適格と見られ担保として認められなくなる。
2007年2月にフランスのBNPパリバが、サブプライム関連ファンドの解約を凍結するまで、主要格付け会社はサブプライム債の殆どを最高位の AAA とランク付けしていた。しかしながら、金融危機が明らかになると手のひらを返したように、格付けを C 以下に変更し、関係者をあぜんとさせたものだ。
無責任とも言える格付け会社の格付け変更により、サブプライム関連はもちろん不動産関連の株式や債券まで担保として認められなくなるケースが相次ぎ、凄まじい信用収縮が始まった。今回の金融不安のきっかけとなった格付け会社は非難の対象となり、政府による規制が議論された。
驚くべきことに、格付け機関はどこからも規制を受けていない。仮に米政府が格付け機関に厳しい規制を設け、「危なそうな株式や債券は早めに格下げしろ」と指示を出したとする。その場合、真っ先に格下げを受けるのは米国債であり、これが投資不適格となると世界中の金融機関がつぶれるだろう。「米国債格下げ」という恐怖のナイフを喉元に突き付けられているため、米政府は格付け会社を規制したくてもできないのである。
日本が大きな財政赤字を抱えているのは確かだが、アメリカも負けておらず、問題は外国人が米国債の大部分を保有していることである。その点からすると、日本国債だけでなく米国債も同時に格下げされるべきだが、格付け機関は米国債の格下げは余程のことがない限りしないだろう。
格付け機関が米国債を格下げなどした日には、「お前ら誰のおかげで飯を食えてると思ってるんだ」という恐ろしい恫喝を米政府から受けることになり、極端な話、消滅させられる可能性がある。格付け機関は米国債を AAA に保ち、米政府は格付け機関を規制せず、「いい子、いい子」と頭をなでる。日本語では「持ちつ持たれつ」、英語では「give & take」というが、これらの言葉は彼らのためにあるのかもしれない。
金融機関側にとっても、融資する際の判定基準として格付け会社は必要であるため、政府、民間共に格付け会社に何も言えないのである。誰からも規制されず、「まあこんなもんかな」程度の基準で格付けを決める格付け会社と、「寿司のようなもの」を提供するフランスの日本料理屋の違いを見分けられないのは私だけではないだろう。どちらもやっていることがいいかげんである。
某国の首相が国債格下げについて、「そういうことに疎い」と発言したとされるがそれも当然だ。なぜならば、格付け機関は誰も触れられない「市場の神」だからである。
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