フランスより HAT です。2週間前、エセック日本事務所の代表が来仏し、エセックの卒業生、在学生が集まって食事会が催されました。
中々楽しい会でしたが、一番興味深かったのはそこにいた日系フランス人との会話です。彼の両親は日本人だが在仏35年で、彼自身生まれも育ちもフランスパリっ子。見かけも名前も日本人なのだが、国籍はフランスで教育もフランスでずっと受けてきたらしい。
エセックをはじめとするグランゼコールに入るためには高校卒業後、プレップと呼ばれる予備校のようなものに通い、そこでの成績によってどこのグランゼコールに入るかが決まる。彼も他のフランス人と同じようにこのプロセスを経て、エセックに入ってきている。
ちなみに仏企業が採用したがるのは、上記の仕組みを通ってエセックを卒業したフランス人達だ。留学生の多くが、「エセックを卒業してもフランスで仕事がない」と言うのもフランスの特殊な教育システムが原因と考えられる。
慶應もそうかもしれないが、プレップを通ってきたエセックの正規(?)学生は金持ちが多い(まあ、留学生も殆どが金持ちなのだが)。金持ちということは両親が社会的に高い地位にあることを意味し、仏企業はそのコネクションを欲しがる。学生の100%が英語を完全に操れることから元々優秀ではあるが、「コネ社会」であるフランスでは彼らのネットワークが財産なのである。
話が完全にそれたが、日系フランス人の話である。彼がエセックに入った理由はKBSに留学するためだった。IP制度を使って自分のルーツである日本に留学した時、彼の胸は期待に踊っていたという。
しかし、現実のKBS生活は彼にとって大変厳しいものだった。KBS留学当時の2003年、彼は23歳でインターン以外の実務経験はなかった。平均年齢30歳のKBSの授業は発言が活発で、経験がなく日本人ではない彼は非常にとまどったという。
フランスの文化として、「優秀な人間は騒がない」という考えがあるらしく、それはエセックの授業に参加すれば一目瞭然だ。教員が質問しても、「シーン」として誰も顔を上げない時すらある。この状況に慣れていた彼にとって、多くの学生が手を上げている KBS の授業は異様に映ったらしい。
更に彼を悩ませたのはグループワークだ。メールのやり取りだけでプレゼンを作ることもあるエセックに比べて、KBS のグループワークは何時間も延々と続く。それだけ長い時間をかけても結論が出ないこともあり、分担作業に慣れている彼は「これで行きましょう」と最終的に投げやりな態度を取らざるを得なかった。
「自分は顔も名前を日本人。しかも周りは皆年上で経験が豊富。他の留学生は文化が分からないから間違えても許されるけど、自分は許されないんじゃないかと思って悩みましたよ」と冗談交じりに話すが、当時はアイデンティティ・クライシスに陥り相当辛かったと言う。
KBS からエセックに来る側もその違いに驚いたが、その逆はもっと衝撃的だったようだ。彼の場合、日本語ができたため日本語の授業に入ったという特殊事情もあっただろうが、今では「良い経験だった」と感じているらしい。
そんな話をしながら、レストランの人が違うものを持ってきて、「これ頼んでないよ」とフランス語で話す彼を見て、色んな人がいるもんだなぁと改めて感じたパリの夜だった。
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