2010/12/09

郵送レポートと民主主義

  
  フランスより HAT です。今学期も残すところ二日になりました。こちらは雪が続いており、長いようで短かった MBA 生活が終わりに近付いていることを感じます。

  先日、「ソニー本社はストックホルムにある」と言った教員を紹介しましたが、この科目のレポートはプリントアウトして、彼女の実家があるボルドーに普通便で送らねばなりません。クリスマス休暇中、帰省する彼女は暖炉の前でエスプレッソを飲みながら、優雅にレポートを読むのでしょう。もしくは、プリンターのカートリッジを使いたくないだけかもしれません(だったら PC で読めばいいのに)。

  エセックではイントラネットが整備されており、レポート類はそこに張り付けるだけで事足ります。しかしながら、彼女のレポートは封筒に入れて、切手を張って送らなければならないのです。

  彼女を仮に日本の首相と考えてみましょう。彼女は明らかに理不尽な要求を学生(国民)に押しつけています。学生はそれに対して何かできるかと言うと、現状はできません。なぜならば、シラバス(法律)に「普通便でレポートを送れ」と書いてあるからです。

  では学生に何ができるかと言うと、教員を評価するアンケートで叩くことです。これは選挙と同じ効力を持ち、評価が余りにも低い教員は来学期からの仕事がなくなる可能性があります。無茶苦茶なことをする者は選挙で倒されるのが民主国家でしょうが、こちらの学校でも同じ作用が働きます。

  日本の大学の場合、多くは終身雇用であり、教員が無茶苦茶なことをして、学生が授業評価で厳しい結果を出しても仕事を失うことがありません(セクハラ等は除く)。授業評価自体が万能ではなく、それを鵜呑みにすると単位を簡単に出す授業、A を連発する教員が高評価を受ける可能性もあるため、欧米の学校のやり方が完全に正しいとは言えません。

  しかしながら、学生の声が余り反映されないのは選挙がない社会と同じで、駄目な人間がいつまでもはびこってしまう可能性が高くなります。少なくとも授業評価を気にする姿勢は必要で、それがないと教員側に緊張感が生まれず、授業をより良くしようとするインセンティブが働かなくなります。

  そんなことを考えながら、プリントアウトしたレポートを封筒に詰めているのでした。

  

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