2010/05/01

【ESSEC通信 Vol.3】パリの郊外で寿司への愛を叫ぶ 

<親日国:フランス>
私自身、欧州を訪れたのが過去一度(なぜかブルガリア)だけで、フランスは初めての訪問になります。日本のアニメ等がフランスでは受け入れられており、日本に対しては友好的というメディアの情報が果たして本当かという気持ちを持っていたのですが、この点については報道が正しかったようです。少なくとも私の接するフランス人は皆友好的で、私が読んでいるフランス語版の村上春樹の小説を見ると、「私も読んだよ!」と話しかけてくる人もいるくらいです。


<食事>
フランスに来てからというもの、ほぼ毎食自炊をしております。こちらは外食が基本的に高いのですが、スーパーで売られている食料品が日本に比べて安価なため、自炊をしたくなる環境にあります。キャンパスの周りにも余り食事をする場所がないため、お昼も弁当を持参している状態です。フランスに来て一番辛いのは、美味しいお寿司を食べられないことかもしれません(涙)。


寮には台所があり、大きめの冷蔵庫も設置されているため、日々料理研究家のように格闘しております。こちらはパスタソースが豊富なため、トマトソースやカルボナーラを作ることが多いです。中々腕も上がってきましたので、フランスに来ることがあれば、是非食べに来て下さい。


週に一回は作るカルボナーラ。
上にまぶすチーズによって味も変わります。

<学校>
 エセックはKBSと同じ3学期制になっており、授業が行われる時間帯もよく似ています。KBSと大きく違う点は、教室の机にパソコン用電源がなく、殆どの学生がノートで授業に臨んでいる点です。因みに、今学期の私の履修内容は以下のようになっています。
月曜日:9:00 – 12:00Organizational Behavior
組織論に近いが、ミクロな問題を多く取り扱う授業。「仕事以外のことは話さず、挨拶さえろくにしない上司にあたったら、君はどうする?」等という現実には考えにくいケースもある。「遅刻した人は教室に入れない」ルールがある授業だが、この間教授が遅刻していた。

火曜日:13:00 – 16:15French for beginners
エセックの授業で最も難しい(?)といっても過言ではないフランス語の授業。必修ではないため、受けなくても卒業は可能。二週間に一度テストがあるのだが、授業で取り扱っていない内容も平気で出題される。笑顔が素敵な女性教員が担当しているが、履修した者は皆、「彼女の笑顔にだまされるな」と語る。

水曜日:授業なし
 午前中は近くの映画館に行くことが多い。平日の午前は人がいないため、シアターを独占状態。しかも学割がきくため、料金が4.90(約600円)と非常に安い。但し、食料持ち込みが不可であるため、どうしてもお腹が減っている時はポケットに入る程度の食べ物を隠して入館する。午後は翌日の準備をしたり、村上春樹のフランス語版を読んだりする。村上作品はほぼ全てがフランス語訳されており、こちらにいる間に全巻読破することが目標である。


村上春樹の代表作「ノルウェイの森」のフランス語版。
フランス語の題名は「ノルウェイの森
(Le bois de Norvege)」ではなく、
La Ballade de I’impossible」。
「不可解なバラード()」とでも訳すのか?

木曜日:16:30 – 19:30Strategy and Management
 履修者40名中39名がフランス人。つまり外国人留学生が私一人で、凄まじいアウェイ感を味わう授業。英語の授業のはずなのに、時折フランス語が飛び交う。授業用の資料がメールで配布されるのだが、どの学生がきちんとダウンロードしているかをチェックするのが趣味という、ちょっと変わった教授が担当。

金曜日:9:00 – 12:00Management Control
 どこかで聞いたような授業(?)だが、こちらでは課題のケースに対して事前にプレゼンスライドを毎回教授に送る形になっている。二人一組でグループを組み、内容の濃いスライドについては授業でプレゼンを行なう。比例縮尺や因果関係図を用いたスライドは評価され、KBSの底力を感じる授業でもある。因みに、同じグループの中国人留学生Yonglian Yang 9月にエセックからKBSにダブル・ディグリーとして派遣される学生なので、皆さん仲良くしてあげて下さい。

番外編:一週間集中授業:Negotiation Workshop
 エセックには「Intensive one-week courses」という仕組みがあり、一週間連続で授業が行われる期間がある。この授業では具体的な交渉術を学び、アフリカの産油国との利権交渉から、工事現場がうるさいと騒ぐ住民をなだめる建設会社社長役まで、あらゆる想定のケースが用いられた。
Negotiation Workshop」の授業で使われた教科書。
去年の二学期にKBSで受けた「経営法学(隅田先生)」
の授業で行った交渉術の理論にも通じるものがあった。

著名なコンサルタントでもある教員が強調していたのは、「時間に遅れるな、信頼関係を作れ、コミュニケーションを取れ」という当たり前ともいえる三点である。授業中、グループワークの後でそれぞれの交渉に入るのだが、意見がまとまらないグループもあり、時間通りに交渉が始まらなかったりする。時間に遅れたグループは遅刻への謝罪をして交渉を始めたり、謝罪しない場合は相手側から遅刻の理由を問い詰められたりする。面白いことに時間に遅れたグループはこの時点から明らかに不利な立場に陥り、定刻通りテーブルについていたグループが殆どの場合有利に交渉を進めていた(遅刻すると9割近い確率で交渉に負けることが立証されているらしい)。
時間に厳しい社会にいた者からすれば定刻通りの開始は当然であるが、そうでない社会においても、「時間にルーズな者は負けるのである」とフランス人である教授が力説していたのは意外である。彼によると、時間を守る人間は信頼され、コミュニケーションが円滑になるため、長期的な関係が構築できるとのことである。人間関係において、第一印象が最後まで尾を引くことは実証済みであるが、遅刻は第一印象を最悪にする要因であるそうだ。「フランス企業の国際競争力低下は、時間にルーズであったことが大きい」という持論を説き、「時間に遅れてくる恋人と付き合っている奴は大事にされていない証拠だから、今すぐ別れろ」という乱暴な発言もあったが、非常に興味深い授業であった。

<中田英>
 KBSにあってこちらにないものは、ある種異様とも言えるグループワークの一体感かもしれません。KBS時代は皆が全力疾走していて、自分も同じようにやっていて余り気付かなかったのですが、あのような場にいられたのは非常に恵まれていたと最近感じております。ドイツW杯で日本代表の選手達が足を止める中、一人で走っていた中田英を見習い、こちらでも周りに流されず、自分のペースでやっていきたいと思います。皆さんもこちらに来られた時、私がさぼっているように見受けられた場合、「中田英を見習え!」とお叱り頂ければ幸いです。

ドイツW杯、一人で走っていた中田英。
こちらに来て改めて思いました。あなたは実に偉大です。

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