2010/10/30

コンサルオフィス24時

  フランスより HAT です。本日、某コンサルティング会社のパリオフィスを訪れました。フランスの国会議事堂にほど近いオフィスは太陽光を浴び、白いビルが更に白く見えたのであります。

  私が最初にコンサルタントに会ったのは、3年前までさかのぼります。前職の営業担当者のやる気を引き出すため、インセンティブ・ボーナスの算定制度を抜本的に見直すために外部のコンサルタントが呼ばれました。紺のストライプ・スーツに身を包んだ彼は、様々なミーティングをこなし、やる気満々でした。

  しかし、一つ問題がありました。彼は日本語が話せなかったのです。外資系と言えども、営業担当者は英語ができない場合もあり、多くの場合通訳をつけてコンサルタントと話す形になりました。こうなると、現場の人間は言いたいことを言わず、上っ面の意見しかコンサルタントに伝えない状況になったのです。通訳が入ると信頼関係が薄くなるのは外交関係でも同じで、日本の首相や大臣が英語を話せないのはこの点で大きな問題があるでしょう。

  さて、今回コンサルティング会社のパリオフィスを訪れたのはケース・ディスカッションをするためであります。早速ですが、以下はケース・ディスカッションのやり取りです。

コン: 日本の筆記具市場はどれくだいだとお思いですか?
HAT: 筆記具とおっしゃいますと?
コン: 鉛筆、シャーペン等書くために使う用具です。
HAT: 1年に1人4、5本筆記具を使うとして、価格にすると1本100円かける5で500円。日本の人口が1億3千万として、これかける500で約650億円・・・

  という風に試算を交えながら、様々な議論を行いました。さすがは現役バリバリのコンサルタント。スマートで聞き上手、ときおり笑顔を振舞いながらのやりとりとなりました。頭脳だけで商売をしているコンサルタント。これからは色々なことを考えながら生きようと感じた、金曜日の午前でした。

  

2010/10/28

タックの授業

なぜか暖かい日が続いて気持ち悪いハノーバーからです。青井先生いわくこの暑さはインディアンサマーというらしい なぜインディアンかは現地の友達に聞いてもわかりませんでした。
タックは先週一週間中休みで今週月曜日から後半戦が再開しました。この一週間の休みはタックの2年生にとっては、この深い森の仲間でリクルーター軍団が一週間の日程でわんさか押しかけ、内定を出すとても大事な期間です。休み中に図書館に行ったら、スーツ姿の友達にやたらと会いました。
授業はどのような感じかといいますと、規模が小さい大学のため割と和やかな感じです。後半は、上級競争戦略論、イノベーションとアントレプレナーシップストラテジー、上級プレゼンテーション、女性とリーダーシップ、あと聴講で経営再建論をとってます。前3科目は、フルターム授業で前期から引き続き、女性。。。は半タームのため後半から始まりました。

1上級戦略論 軍隊出身のダベンティという先生で、戦術を企業戦略に生かそうというのが彼のコンセプト。彼の理論はポーター批判に始まり、コモディティ打破のための戦略提案がメインです。この授業はコールドコールがあり(要は突然当てられること 答えられないと評価が下がる)、最初はびびりましたが、最近はなれました。ローマ帝国時代の歴史から戦略をみるという視点は割と面白いです。明日は、ランチタイムに先生によるローマ帝国の戦略について自由参加の授業があるので参加します。

2 アントレプレナーシップ等 略しましたがこの授業は、とてもわかりやすくておもしろい。アドナー先生はタックに来る前はインシアードにいて戦略を教えていたそうです。きわめて明快な授業です。新技術系の話が多く、もともとエンジニアの学部出身のルームメートは特に気に入っています。

3上級プレゼンテーション この授業はほぼ毎回パワポ作ってプレゼンをするという授業ですが、期末テストがないのはありがたいです。しかーし、アメリカ流のプレゼンになれず、やたらアニメーションを入れろという先生の指示はいまだに習得できないです。 1の授業での先生のプレゼンにしても毛虫のアニメーションがやたらでてきたりするので文化の違いなのかなあと思います。アメリカと日本との違いをいろいろ比較できるという意味でもとった意味があるのかと思ってます。

4女性とリーダーシップ この授業は、予想通り女子学生しかいません。しかしタックの学生だけでなく、タックの隣のセイラーという技術大学院からも学生が来ていてバラエティがあります。先生は、タックの万オリエントの文化を改革したいという気持ちをもって暑く授業をしてれます。ときどき暑すぎますが。。あとこの授業は鬼のようにリーディングがあり、明日の課題もさっきプリントアウトしたら、かるく50ページ超えていたので鬱が入りました。おまけに授業ですべて内容を確認するため飛ばし読みができない。。。

5 経営再建論 これは許斐先生の授業とはまったく異なり、一年生のときの井上先生プラス小幡先生という感じです。前半戦は完全に井上先生と同じでバリュウエーション重視で閉口しましたが、後半に入ってコーポレートガバナンス、アメリカ破産法とかに話題の重点が移ったので楽になりました。この科目は一番リーディング量が多く一回当たり70ページは超えることが多々あります。月曜、火曜一限なのがさらにつらい。。。内容は、割と深いためおもしろいです。この授業を聴講したのは、先生が小幡先生の兄弟子のラポルタ先生(国際財務でたくさん読まされた)だからで、これまたびっくりしたのが、外形はまったく異なりますが、しゃべり方とか教え方とかがデジャヴューであったことです。小幡先生に、伝えたところ、指導教授が同じだからだといわれましたがそこまで似るのか。。。とおもいました。

私が取っている授業はこのような感じですが、どの教授も親切で下手な英語の質問にもよく答えてくれます。これもタックの文化なのかもしれないです。

余り長いと読む気がなくなるとおもうのでこの辺で



この取引はここだけに・・・


  フランスより HAT です。社会人2年目に審査業務部というところにいたのですが、そこでは不動産、株式、債券等を担保に様々なローンを提供していました。上場企業オーナーの顧客で、自社株を担保に結構な額の融資を受けていた方がおり、その方から、「株価が下がっても、担保割れを起こさない仕組みを作れないか?」という依頼がありました。

  日本の場合、企業オーナーは株価が下がると思っていても、中々保有株を手放さず、暴落時でも何もしないという方が結構います。この方は新し物好きということもあって、色々な取引を試してくれました。

  前職はデリバティブに強かったこともあり、顧客にプットオプションを買ってもらい、それに質権を設定する(オプションを担保にする)提案を行いました。これにより、株価が下落してもプットオプションが防波堤になるため、担保割れを起こさずに済むことになります。

  その後、2001年9月に米国同時多発テロがあり、株価が暴落したのですが、この仕組みのおかげで顧客は追加担保を入れる必要もなく、大変喜んで頂きました。この取引では、融資の金利、オプションのプレミアムがこちらの利益となるため、営業担当者もホクホク顔でした。

  この取引が完了した後、営業担当者の方が労をねぎらい、美味しい和食をご馳走してくれました。しかし、彼が放った一言が食事の味を変えてしまったのです。

彼: 「HAT 君、この取引はここだけにしてもらって、他の営業部員には教えないでもらえるかな?」
HAT: 「えっ、どうしてですか?」
彼: 「これが広まってしまうと、他の人も儲けてしまうでしょ。」
HAT: 「まあ、そうですね。」
彼: 「そうすると、東京支店全体が儲けてしまって、来年の目標が上がっちゃうじゃん。」

  彼が言いたかったのは、「この手法を他の営業部員が使うと利益が膨らみ、東京支店全体の収益が拡大するため、来年の収益目標が高くなり嫌だ」ということです。つまり、「俺だけ儲けたい」というエゴを彼は丸出しにしていたわけです。

  前職の経営が行き詰ったのは、この「俺だけ儲けたい」症候群が蔓延していたことがあげられます。こうなると、ノウハウを同僚に教えなくなり、会社全体としては発展が止まります。しかし、教えてしまうと自分の収益目標が上がるので、個人としては教えない方がよい。つまり、「個人にとってはよいが、全体にとっては好ましくない」現象である「合成の誤謬」が社内で発生していたことになります。

  実は、日本社会全体にも同じ現象が起っています。「俺の会社だけ儲けたい」という理由で、法律で定められた有休を従業員に消化させず、社会全体で供給過剰現象を引き起こしています。合成の誤謬を解消するには政府の役割が大きく、有休消化を法律で義務付ければ、お金を使う機会が増え、日本が抱える問題解決になります。

  フランスでストが頻発して、交通は麻痺し、外資系企業は進出をためらい、様々な問題が起っています。ストの目的は、「俺だけいい思いをしたい」ということでしょうが、社会全体では明らかなマイナスです。フランス人に「ストを控えろ」というのは、日本人に「有休を消化しろ」というのと同じなのかなぁと思う今日この頃です。

(写真は、広末涼子主演の映画「秘密」。この頃が一番かわいかったなぁ・・・)

  

2010/10/27

後半戦スタート

初雪が降ったストックホルムから増子がお届けします。

早いもので、今日から後半戦がスタートです。
後半に取った授業はMacroeconomicsとDesign & Innovationです。
どちらも週に2回ずつ授業があります。
Student webに乗っているスケジュールだと変則はなさそうです。
(前期は突然週3だったり曜日が変わったりした授業も。)
でも、この予定表は正しくないこともあるので、中々油断できませんが。

Macroeconomicsは学部生も取れる授業なので、基礎っぽい感じ。
何気に未修者なので助かります。
そして、周りを見渡すと、若者率高し。
元々、SSEの修士課程は24~25歳くらいの人が多いのですが、
この授業はもっと若そうだ。

D & Iの方は、近隣の5大学と合同の授業で、
電車で30分くらい行ったところにあるの美大での授業。
グループワークで最終的にはデザインによるソリューションを提案するとか。
プロトタイプの作成までやるらしく、面白そう。。。

両方の授業で縦横のダイバーシティーを感じつつ
更なるネットワーキングに勤しむ所存でございます。


さて、話は変わりますが、今日から私、日本語を教えることになりました。
生徒さんはスウェーデン人の女の子で、空手が好きなんだとか。
可愛い。そして意欲的で飲みこみも早い。

今日は日常会話を中心に、動詞の五段活用についても説明しました。
飲まない、飲みます、飲む、飲むとき、飲めば、飲め、飲もうです。
aiueoって変わるんだよ、って言ったら面白がってました。

しかし、教えてみると、日本語の複雑怪奇っぷりがよく分かります。
次回どうしよう。。。

速くならない飛行機


  フランスより HAT です。先日、ボストンに行ってきましたが、改めて米国は飛行機大国だなぁと感じました。飛行機を製造しているメーカーは、世界で米国のボーイングとフランスのエアバスしかありません。エアバスが技術提供した中国メーカー製の飛行機が中国国内を飛んでいるらしいのですが、今のところ中国以外で飛行許可が下りる見込みはないそうです。

  さて、飛行機に乗っていていつも思うのは、「中々、着かないなー」という虚無感です。技術的には飛行機の速度をもっと上げられるのですが、これ以上速くすると空港がパンク状態になって離着陸の制御ができないため、飛行速度が変わらないらしいです(生産政策の授業で、「速すぎても遅すぎてもいけない。速く作りすぎると工場の後ろが詰まる」っていうのがあったよなぁ。鍋屋バイテックだっけ?それと同じ論理か?)。

  また、ボーイングとエアバスの二社が世界市場を寡占しているため、彼らに技術革新やコスト削減のインセンティブが少ないのも速度不変の理由とも言われています。コカ・コーラとペプシの関係と同じで、二社寡占の場合に一方が価格を下げると、結局どちらにとっても良くない結果が起こるという経済学上の論理が、空の世界でも現実になっている訳です。
 
  それに加え、2001年9月以降世界中の空港が防犯を強化して、乗客が飛行機に乗るまで時間がかかるようになって、更に飛行速度を上げる意味がなくなったと言われています(乗客の空港滞在時間が長くなり、更に込むようになったということ。この状態で飛行速度を上げると、もっと乗客が増え、空港がパンクすることになる)。

  信じられないことに、2001年9月以前のアメリカでは殆ど防犯チェックもなしに乗客が飛行機に乗っていたと言われています。私のアメリカ人の同僚によると、「テロ以前は、預入荷物がなければ、15分前に空港入りしても飛行機に乗れた」と言っており、いかに現在と違っていたかを物語っています。

  今回、ボストン入りする時に税関で指紋を取られ、ボストンを出る際には「靴を脱げ」と言われ、空港での防犯体制が強化されることはあっても、ゆるくなることはなさそうです。「空の旅を快適にする方法はあるのだろうか?」と考えてみたところ、「成功してファーストクラスに乗るしかないなぁ」という結論に達しました。アメリカン航空の狭いエコノミー席で、半年後の社会復帰に向けて、ひそかに意気込みを誓う自分がいたのでした。

  

2010/10/25

フランス雑感

こんにちは。村井です。
昨日、中国人留学生とフランス人、私、河田さんとで火鍋(四川風の辛い鍋)を囲んできました。フランスの食べ物は基本的に美味しいのですが、久しぶりにアジアの味にふれてとほっとしました。自分はやはり日本人だなあというアイデンティティを認識した瞬間でした。
これまでフランスの景色や旅行の話ばかりだったので、今日はフランスに来て感じたことについて綴ってみたいと思います。

さて、私の取っている授業では、なぜかフランス人のSup de Cop(日本でいう修士課程)の学生さんと一緒にグループワークをやることが多いです。まず、フランス人とグループワークをやっていて思うことから書いてみましょう。フランス人はとても論理的です。伝統や文化を大切にしているお国柄ということもあり、課題のテーマ(企業研究など)に関しても、過去に遡って社会や企業の文化的、歴史的背景から答えを見出すことを得意としているようです。我々日本人は、効率性や生産性に目が向いているので企業を見る視点がずいぶんと違うなあと感じました。簡単に言えば、日本はスクラップ&ビルドだけど、ヨーロッパは積み重ね型(accumulated)だということです。現在の形になるために、過去こういう過程を通ってきて現在に至るみたいな。それと、フランス人はグループワークの際、自分の出した意見に対して必ず理由を答えてくれるので、僕にとってはとても良い環境です。おかしいと思ったり、こういう考え方もあるよ、と思えば意見を出すし、それで論理が通っていたら彼らの意見に同意する。だからグループワークも早く終わります。
まあ、HATさんはいつもフランスを批判的に書くのですが、物の見方によっては逆のことも言えます。確かにフランスはストライキが異常なほど多いです。これは否定しません。相当経済的にも損をしていると思います。一方、日本はというと、日本人は確かに働いています。バカンスもありません。で、結果はどうかというと、これだけ働いてフランスと同じかそれ以下の経済成長しかできていない現状です。これをどう見るべきでしょうか。フランス人は以外と効率的に労働をしていると考えることができませんか。
また、これについては、日本人は自分で自分の首を絞めているという考え方もできます。フランスの店は日曜が基本的にお休みです。特に、ここReimsでは日曜は食料品も買えません。でもみんなが休むことに納得(宗教的見地)しているからこれで良いのです。逆に日本はサービス過剰と考えることもできます。サービスを提供するために、昼夜を問わず自分たちもその労働に加担しているのですから。どういう働き方が良いのか考える必要もあるでしょう。あと日本人は良質の製品を安価に作ったり、大量に作ったりするのが得意ですから、物に価値を付けにくいですね。いっぱいある物に高いお金を払う人はあまりいません。この点について言えば、フランスはデザインやブランドといった無形の価値を付けるのが得意だと思います。但し、工業製品(特に日用品の小物)は日本に比べ高く、品質は10年以上遅れをとっている感があります。それと、基本は農業国なので農産物は安いです。
 次に感じるのは、社会全体のルールに関することです。日本も自己責任という考え方をもっと導入すべきでしょう。自分の身は自分で守る。この考え方は重要です。確かに何か起きたら警察に助けてもらうしかありませんが、所詮警察も何か事件にならないと動けませんから。最近思うのは、日本もそれほど安全ではないということです。海外は危ないという概念が定着していますが、日本だって人の目が行き届かないところは決して安全とは言えません。これは基本的に世界のどこの都市でも同じだと思います。
 自己責任という点で感じるのが、社会インフラに対するコストのかけかたです。鉄道にしても郊外に行くとフェンスのないところをTGVが高速で通過したりします。日本の新幹線だと人が入り込まないように鉄道会社がコストをかけて全区間で対策を講じますが、こういうコストが建設費を高くする理由の一つになるような気がします。人口や税収が減っていく中で、今後どのように社会インフラを維持していくか根本から考えなくてはならないでしょう。また、今やスローガンのように使われている「コスト削減」という言葉ですが、現状のルール(法律や制度)を変えずに金を削るだけならば、製品や建設に関する仕様は変えられないので、物を安く買ってカバーするか、単純に業者に同じ仕事を安くやらせるしか術がないのではないでしょうか。仕事をしていて思うのは、皆さんやり方を変えることには非常に慎重ですし、変えた後何が起こるか分からないのでむしろ変えたくないというのが本音だと思います。文化や伝統、日本人の気質などをあまり考えずに効率性や経済性という観点だけでやろうとしても、日本人の本質と政策が一致しないのでうまく機能しないのではないかと思います。人間の本質的研究と経済、技術の3つが揃ってはじめてうまく機能するのではないでしょうか。西洋の人は哲学や芸術に関する話を良くしますし、詳しいです。日本では就職の際に、こういった学部で学んだ人が一般的に不利だと言われているのはとても残念な状況だと思いますね。

2010/10/24

厳しさは優しさ


  フランスより HAT です。今週、木曜日から土曜日まで米国ボストンにおりました。ボストンは初めてだったのですが、天気も良く非常に楽しい3日間でした。土曜日の朝に、ニューヨーク時代の上司と飲茶をしました。彼は中国系アメリカ人で、現在はボストンにある生命保険会社の運用担当として活躍しています。

  私がニューヨークにいたのは2002年、2003年でしたが、当時はアメリカの金利が下落局面(価格は上昇)であったため、債券取引が大変活発な時期でした。従業員を教育しないことで有名な(?)前職にあって、当時の上司であった彼は例外的に部下に対して教育熱心で、自分の知識や経験を常に分け与えようとしていました。彼がいつも私に言っていたのは、「英語は堂々と間違えろ」、「話す内容を文書化しろ」、「距離をつめてささやけ」という三つです。

  ①英語は堂々と間違えろ
  彼は常々、「お前は外国語で仕事をしているんだ。それは、非常に不自然なことだ。だから、英語を間違えるのは自然なことだ。気にせず堂々と間違えろ」と意味不明の論理を振りかざしていました。但し、「堂々と間違える」ことは結構重要なことで、間違えることを気にせず話すことで間違いが少しずつ減っていくことに気が付きました。

  その代り、一つだけ決して間違えてはいけないことがありました。それは金額です。債券の注文をトレーダーに出す場合、「Ford, Buy, $430,000(four hundred thirty thousand)」という形で普通は終わります(かなり簡略化してある)。私は英語に不安があったため、「four, three, zero, comma, zero, zero, zero」と数字で復唱することを彼から指示されました。おかげで、大きな事故を起こすこともなく、2年間を過ごすことができたのです。

  ②話す内容を文書化しろ
  アメリカの大学では、「スピーチ」という授業があります。そこでは、話す内容をカードと呼ばれる小さな紙に箇条書きにまとめて、それを見ながらプレゼンするように指導されます。ニューヨークに行ったばかりの時は、顧客訪問時もカードに話す内容を箇条書きにして、プレゼンをしていました。しかしながら、内容を完全に覚えている訳ではないので、所々詰まったり、質問にうまく答えられないことがありました。この点について、彼は私に厳しく指導しました。以下は二人のやりとりです。

彼: お前はなんで、その小さな紙を見ながらプレゼンするんだ?
HAT: 大学の授業でそう教わりましたんで。
彼: お前に一つ重要なことを教えてやる。実社会においては、学校の勉強など何の役にも立たない(← 問題発言)。だから、大学の授業で習ったことなど全て忘れてしまえ。
HAT: ・・・
彼: 大体、カードを使うプレゼンというのは、英語が母国語の人間がすることだ。英語が下手なお前がネイティブと同じようにやって勝てると思うか?もっと頭を使え。
HAT: しかし、カードがないとプレゼンが難しくなります。
彼: 逆だよ。話す内容を全て文書化するんだ。そうすれば、内容を忘れても、話が途切れることはない。

  それ以降、プレゼン前日の夕方はいつも文書化した台本を基に、彼の前でリハーサルをすることになりました。文書化を始めて気付いたことは、内容が明文化されているので、自分で「ここはおかしいかな」、「これはこうした方が相手はわかりやすいな」と一人で改良することができたのです。

  また、彼とリハーサルをすることで、「そこはなぜそうなる?」、「どういう論理でその結論になった?」という想定問答の練習にもなったのです。プレゼンを文書化することにより、少しずつ取引量も増え、そうするとトレーダー達も良い情報を回してくれるようになったのです。点を取るフォワードにはパスするけど、点取らない奴にはやらないということかなぁ(笑)。

  ③距離をつめてささやけ
  これは営業で契約まで持っていく時の技術として、彼が唱えていたことです。顧客と話をする際、既に面識があるのであれば、正面ではなく、斜め前に座れと彼はいつも言っていました(正方形の机で、斜め45度に座れという意味)。斜めに座ることで、真正面に座るよりも話す声量が小さくて済むと彼は主張していました(斜めに座ると、こちらの口が相手の耳に直接向いているから。正面の場合、そうではない)。

  彼曰く、「お前は恋人に愛の言葉をささやくとき、真正面から言うか?言わないだろう?隣に座って、彼女の耳元で愛の言葉をささやくはずだ。営業も恋愛と同じなんだから、相手が心地よい空間で、心地よい声量で話さないと駄目なんだよ。」

  最初にこの話を聞いた時、「この人は大丈夫だろうか?」と思ったものです。しかしながら、ものは試しで、既に面識がある顧客との商談の場で斜め前に座ると、確かに反応が良いパターンが多かったのです。恋愛のケースは不明ですが、営業のケースでは「ささやき戦法」はある程度成果を収めたような気がします。その名残で、ビジネス・スクールに入ってからも教授の斜め前に座ってしまうのでした(笑)。

  そんな昔話をしつつ、「以前、ボスは学校教育は役に立たないとおっしゃいましたが、ビジネス・スクールは楽しいですよ」と私は話しました。そうすると彼は、「あれは学部時代の勉強のことを言ったんだよ」と笑うのでした。その目尻には、7年前と変わらず、厳しさと優しさを示すしわが刻みこまれていました。
  
  

2010/10/21

時間の価値


  フランスより HAT です。今日は13時15分からマーケティングの授業があるはずだったのですが、2日前に教授から下記の様なメールがありました。

  「Dear Students、今イタリアにいるんだけど、個人的な用事で今週はどうしてもフランスに帰れなくなったの。誰か別の人が講義できるかどうか確認してるから、授業の1日前にはメールするわね。」

  結果的に、当日になっても教授からメールはなく、授業が行われるかどうかわからないままでした。一応、学生課に聞きに行ったですが、事務員の回答は以下の通りでした。

  「今日、その授業があるかどうか?そんなの私に分かるわけないでしょ。時間になったら教室に行って、教授がいたら授業があるし、いなかったらない。そういうことよ。」

  13時15分に教室に行っても教授がいなかったので、休講でした(のはず)。その後、16時30分からフランス語の授業でしたが、教授が17時になっても来ません。結局17時10分に到着したのですが、その教授の発した言葉が衝撃でした。

  「中々、ガソリンを売ってるガソリンスタンドが見つからなくて!」

  今日、その教授は車で来たらしいのですが、途中でガス欠寸前になり、ガソリンスタンドを探したのですが、ストの影響で給油できるスタンドが少なく、そのせいで遅れたとのことでした。

  その後、何事もなかったかの様に講義が始まったのですが、19時30分に終了するはずの授業が中々終わりません。学生の間に不安がよぎります。

  「この教授、授業開始が40分遅れたから、終了も40分遅らせるつもりじゃないだろうな・・・」

  寮に住んでいる学生は、20時に学校発のバスに乗る必要があるので、19時55分には教室を出る必要があります(次のバスは23時発!)。サッカー日本代表でさえ体得が難しいと言われるアイ・コンタクトによる意思疎通が、19時45分から始まります。

  インド人 → 私 → 中国人 → ドイツ人という感じでアイ・コンタクトを取り、荷物を片付けだしたり、上着を着始めるという、幼稚なプレッシャーを教授にかけはじめました。ある学生はしきりに時計を見たり、窓の外を覗いたりします。さすがに教授も気付いたのか、「そろそろ終わるか」といきなり話を中断して、19時52分に授業は終了しました。

  小走りに教室を出て、バス停に向かう途中でドイツ人と、「やっぱりこの国で働くのは無理だよな」とささやき合ったのでした。

  

2010/10/20

ないそでは振れん


  フランスより HAT です。こちらでは、年金改革に反対するストが全土に飛び火して、エセックがある田舎町セルジーでもデモ行進がありました。

  フランスでは60才が退職年齢ですが、今回の改革案により62才に引き上げられる予定です。フランスの年金制度は、第二次大戦後から殆ど変っていないと言われます。昔は18才から働き始めていたのが、進学率上昇と共に就労開始が22才前後に伸びているため、制度自体が続かないのは、普通の思考能力があれば理解できるでしょう。

  仏大統領のサルコジは、「本来だったら、退職年齢を60才から65才まで一気に引き上げてもおかしくないんだ。62才に抑えただけでも、ありがたく思え」的な言動を取っているため、ゼネストの域にまで混乱が拡大しています。

  エセックがあるセルジーに現れたデモ隊は、市役所を取り囲み、「サルコジは辞任しろ!」、「年金改革反対!」等のシュプレヒコールをあげていました。ただ、デモ隊の殆どが20代から30代前半の若年層で、平日にこの辺りにいるということは、働いていないことを意味しています。年金保険料を払っている人がデモするなら分かるけど、払っていない人達が年金改革に反対するフランスって、やっぱり少し変わってるなぁ。

  それより、明後日のアメリカ行きの便、ちゃんと飛ぶんだろうか。航空会社によっては、他の空港で燃料を多めに入れてくるところもあるみたいだけど。今回はアメリカン航空だからなぁ・・・

  

2010/10/19

私は少し日本語は話せます


  フランスより HAT です。以前、フランスが親日国であることを書きましたが、私の周りにも日本語を勉強している学生が結構います。今日、図書館の個室(KBSのグループ室に似ている)で勉強していると、同じ寮に住んでいるフランス人女性が、「HAT、ちょっといい?」と流暢な日本語を話しながら入ってきました。

  彼女は17才なのですが、飛び級でエセックに入った秀才で、慶應に留学するため日本語を勉強中です。彼女は日本語の授業で使っている教材を片手に、質問をしてきました。以下は、彼女と私の会話です。

彼女: この教材に載っている、「私は少し日本語は話せます」という文、変だと思うんだけど。
HAT: 変だね。
彼女: どう変えると自然になるかな?
HAT: 「私は少し日本語を話せます」かな。
彼女: やっぱり。「は」と「を」で、文法的な違いはあるの?
HAT: ないと思うよ。
彼女: ふうー。日本語って難しい。

  彼女は日本語を勉強してそんなに経ってないにも拘らず、教材の不自然な部分を指摘するまで理解できるようになっていました。そもそも、17才で大学院生ってどういう仕組みになっているのだろう。

  勤労意欲ゼロの人が多いフランスが、まがりなりにも先進国として扱われているのは、彼女の様な人材を生み出す仕組みがあるからかなあと感じました。今後、教育ビジネスに関わる皆さん。ビジネスで成功した暁には、日本でも彼女のようなエリートを作り出せる仕組みの構築を是非考えてみて下さい。そう言えば、エリートって単語、元々はフランス語だな。

(写真は、2009年のエリートモデル世界大会の模様)